超臨場感テレワークを実現する技術:擬音語・擬態語を用いた状況提示技術

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擬音語・擬態語を用いた状況提示技術

 オフィスで円滑に業務を遂行するために,私たちは日々,オフィス状況を無意識に捉え,状況に即した行動をとっています.例えば,チームメンバーの業務が一段落したタイミングで話しかけたり,フロア内で自然に発生したディスカッションに参加したりします.このように,状況に応じて行動することで,スムーズな情報共有や意思疎通を図っています.
 しかし,遠隔地にあるオフィスの様子や,オフィス内で過去に発生した出来事を把握するのは困難です.こうした空間的に離れるだけでなく時間的にもずれたオフィス状況を把握する方法として,オフィスを撮影した映像を視聴する方法が挙げられます.しかし,カメラの画角という限られた範囲であっても,離散的に発生する事象を漏らさず正確に捉えるのは困難です.また,過去の出来事を把握するためには,過去に遡って映像を視聴せざるを得ず,時間がかかります.
 そこで私達は,擬音語・擬態語を用いたオフィス状況提示技術を開発しています.この技術は,擬音語・擬態語変換技術によって生成されたオフィス内の音や動きを表す擬音語・擬態語をオフィス映像上やフロアマップ上に重畳表示します.擬音語・擬態語という直観的な表現により,見落としを減らし,かつ正しく把握できるようにします.また,各出来事を,擬音語・擬態語を重畳した代表的な画像1枚で要約することによって,多数の出来事を短時間で確認できるようにします.
 提示形態として,フロアの現状を直観的に提示する「リアルタイム表示機能」と,過去から現在までの状況を要約して提示する「タイムシフト表示機能」を開発しました.

リアルタイム表示機能

 フロア全体の概要を表現するマップモードと,フロアの一角の詳細を表現する実写モードを開発しました.図1にマップモード,図2に実写モードの一例を示します.
 マップモードでは,フロアマップ上に,いま発生している音や動きを表す擬音語・擬態語を重畳します.擬音語は,擬音語に対応する音を捉えたマイクの位置付近に重畳します.擬態語は,カメラ画面上での位置とフロアマップ上での位置とを対応表を参照し,擬態語に対応する動きのカメラ画面上での発生位置に応じて重畳します.これにより,人の声や動きの発生箇所とその様子を直観的に捉えられるので,ディスカッションの発生等,いまフロアのどこで何が起きているか,容易に気づき把握できます.
 実写モードでは,フロアの一角を撮影した映像上に,その場所でいま発生している音や動きを表す擬音語・擬態語を重畳します.擬音語はマイク位置近辺に,擬態語は動きの発生箇所付近に重畳します.これにより,チームメンバーがいま話しかけて良い状況か否か等,注目する人や場所の現状を詳細に確認できます.

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図1.マップモード

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図2.実写モード

タイムシフト表示機能

 フロアの一角での過去から現在までの出来事を表現する要約モードを開発しました.図3に要約モードの一例を示します.
 要約モードでは,フロアの一角で生じた過去から現在までの各出来事について,出来事を代表する画像1枚に擬音語・擬態語を重畳したサムネイル画像を生成します.このサムネイル画像を時系列順に並べて表示することで,オフィスで発生した一日の出来事を短時間で確認できます.また,遠隔地にいるチームメンバーがいつどんな様子で席を立ったか(さらに,いつ席に戻りそうか)等,未来予測に役立つ過去の出来事を瞬時に把握できます.

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図3.要約モード

 擬音語・擬態語の提示によるオフィスイベントの把握効果についてご興味のある方は,文献[1][2]をご参照ください.

[1]Kyota Higa,"Onomatopoeia Expressions for Intuitive Understanding of Remote Office Situation",HCI International2013, Part I LNCS 8021, pp.351-358, Jul.2013.
[2]石川真澄,比嘉恭太,野村俊之,"オノマトペ表現によるオフィスイベント把握効果の検証",第21回テレイマージョン技術研究会, Dec.2013.

メール配信タイミング制御技術
オフィスワークへの集中を邪魔しないタイミングでメールの着信を通知します.

擬音語・擬態語を用いた状況提示技術
過去から現在までの出来事を、漏らさず短時間で把握できるようになります.

超低演算量映像符号化技術
一般の符号化方式と比較して,1/2 ~ 1/10 の演算量で圧縮符号化ができる技術です.

超臨場感テレワークシステムの心理学的評価
超臨場感テレワークシステムを、感性心理学的に評価できるようにします.

実用空間共有技術
隣にいるような感覚で,共通の作業オブジェクトを見ながら協調作業できるようになります.

ハイパーインフォメーションターミナル
オフィスの様々な情報を容易に表示して共有することができるようになります.

擬音語・擬態語変換技術
オフィス内の音や人の動きを,瞬時に理解できるようになります.

割り込み拒否度推定技術
互いの仕事を邪魔することなく,必要なコミュニケーションを取ることができるうになります.

任意エリア収音技術
広いオフィスの中で,あるエリアの音だけを収音できるようになります.