超臨場感テレワークを実現する技術:割り込み拒否度推定技術

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割り込み拒否度推定技術

オフィスにおけるデスクワーク業務は,申請書類の作成やプログラム開発などのように,集中して行う作業と,日誌の記入や郵便発送のように比較的リラックスして行えるものまで様々です.さらに,実際の勤務場面では,これらの個人業務の合間に,時折,業務に関する相談や連絡,メールや電話などのコミュニケーションが発生します.オフィスでは日常的な光景ですが,仕事中の割り込みは作業を「断片化」し,知的生産性を低下させることが指摘されています[1].
割り込み拒否度推定技術は,このような勤務場面において「今,その人に話しかけるとどの程度邪魔になるか」を自動的に推定する技術です.この技術を応用することで,集中して働いている時には自動的に留守番電話に切り替わり後から通知してくれる,あるいは仕事が一段落してからメールの着信を通知するなど,互いの仕事を邪魔することなく,必要なコミュニケーションを取ることができるようになります.

割り込み拒否度推定アルゴリズム

 デスクワークの中でも,特に計算機を用いた業務に限定すれば,キーボードやマウスを使った操作をしているか否かで,ある程度,作業への集中度を推定できることが予想されます.しかし,思考を伴う作業では操作量が低下するなど,操作量だけでは,正確な予測は困難です.そこで,私たちは,作業の「切れ目」に着目しました.
 作業が一段落したときは,比較的,割り込みを受容できる可能性が高いことは容易に想像できますが,作業の切れ目にも色々な種類があり,割り込んだときの影響は異なってきます[2].割り込み拒否度推定技術は,このような知見に基づき,図1のように,コンピュータを使った作業における「切れ目」に相当する操作ウィンドウの切り替えを検出して,そこに様々な操作情報を加味することで,作業者が割り込みを受容できる程度を統計的な傾向に基づいて推定する技術です[3]

Fig1.jpg
図1 割り込み拒否度推定技術のイメージ

推定結果

上記の方式を用いて,計算機を使用している大学生11人の割り込み拒否度を推定した結果が図2(a)です.割り込まれたくない状態を意味する高拒否度状態を低拒否度と推定した割合は15%で,相手を邪魔する可能性が高い「高リスクな誤推定」が低減されている様子が確認できます.そこで,実際に研究開発職,事務職,管理職を含むオフィスワーカ13人の割り込み拒否度を推定した結果が図2(b)です.やや推定精度は低くなっていますが,同様に,割り込み拒否度が推定されている様子が確認できます.

Fig2a.jpg
(a)

Fig2b.jpg
(b)
図2 割り込み拒否度の推定結果

このように,センサを一切用いない操作情報のみに基づく方法でも,計算機を使った作業に関しては,作業者の割り込み拒否度をある程度の精度で推定することが可能です.より一般的で高精度な推定のためには,紙の書類を対象にした作業や,会話の影響なども反映した推定方法が望まれます.そこで現在は,頭部運動や会話音声を併用する推定方式を開発しています[4].なお,本技術は,インターネットニュースサイトITmediaで詳しく紹介されていますので,興味があるかたはそちらもご覧ください[5]

[1] G. Mark, V. M. Gonzalez, J. Harris,“No task left behind? Examining the nature of fragmented work”,Proc. CHI’05, 2005
[2] S. T. Iqbal and B. P. Bailey, “Leveraging Characteristics of Task Structure to Predict the Cost of Interruption”, Proc. CHI'06, pp.741-750, 2006
[3] 田中,深澤,竹内,野中,藤田,“業務従事者を対象としたPC作業時の割り込み拒否度推定可能性の検討”,情報処理学会論文誌53(1),2012
[4]田中,藤田,“オフィスワーカの状況推定”,電子情報通信学会誌95(5),2012
[5]“仕事をサボるとすぐバレる?”,ITmedia,2012年10月5日掲載記事,2012

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割り込み拒否度推定技術
互いの仕事を邪魔することなく,必要なコミュニケーションを取ることができるうになります.

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