超臨場感テレワークを実現する技術:ハイパーインフォメーションターミナル

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ハイパーインフォメーションターミナル

 オフィスでのコミュニケーションは会議やメールばかりではありません.立ち話やコーヒールームでの何気ない会話(インフォーマルコミュニケーション)もあります.このようなコミュニケーションは高い比重を占めており[1],業務に関する議論はもちろん様々な情報共有が行われていますが,同じ空間に居合わせたメンバーでなければ成立しません.
 ハイパーインフォメーションターミナル(以下,HyperInfo)はセンタオフィスとサテライトオフィスに設置した大画面ディスプレイに遠隔の状況を表示することで離れた場所でのインフォーマルコミュニケーションを支援します.
 大画面ディスプレイに表示された情報は遠隔地と連携しています.あるオフィスのHyperInfoのレイアウト変更や新たな情報が表示されるとネットワークで接続されている他のHyperInfoの表示内容も同期して更新されます.結果として図1の様にHyperInfoの表示内容の変化が離れた場所のオフィスに何らかの状況の変化があったことを気づかせます.
 HyperInfoは「気づき」を与えるだけでなく,遠隔地とのコミュニケーションもサポートします.HyperInfoを用いて遠隔地とコミュニケーションを行なっている最中に素早く自分のアイデアを表示させて顕在化し他人と共有することでコミュニケーションの促進を行います.

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図 1 連携して変化する提示情報が状況の変化を遠隔地に気づきを伝える

デザイン+テクノロジ

 多種多様な情報を一度に多数表示するためには高解像度の大画面システムが必要となります.プロジェクタを用いた場合には画角は広がりますが解像度は高くならず,投影に必要な距離が必要となります.大画面システムにはDisplay Cluster[2]やCGLX[3]のようなシステムがありますがシステムの規模が大きくなり運用に専門技術が必要となるので一般的なオフィスへの導入には適していません.そこでHyperInfoは基本的に高解像度のディスプレイを1~6枚で構築するタイルドディスプレイを用います.
 高解像度大画面ではマウスポインタを見失うことも多く,複数人が同時に利用することはできません.そのためこれまでのPCとは異なったデザインを再考する必要性が生じます.ここで述べるデザインとは単に意匠性に限らず,使い方や運用方法なども含めた広い範囲でのデザインです.
 HyperInfoのユーザインタフェースはスマートフォンやタブレットを操作端末として用います.また,表示された情報に対して直接操作できるようにタッチインタラクションも備えています.ストレスのないタッチインタラクションを提供するためにもこれまでのGUI(Graphical User Interface)とは異なったアプローチが必要になります.例えばメニューやウインドウの装飾を排除し,単純なインタラクションでHyperInfoとの操作が完結するように設計しています,

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図 2  iPadで表示しているコンテンツを操作している様子

表示コンテンツ

 HyperInfoはコンテンツとして画像,動画,PDF,テキストを表示します.表示機能にWebレンダリングを用いているので,Webページの表示も行えます.また,JavaScript,HTML5,CSSなどの技術を用いてHyperInfo専用のWebアプリを表示することも可能です.

ハイパーインフォメーションのオフィシャルページはこちらです

[1] Whittaker, S., Swanson, J., Kucan, J., and Sidner, C.TeleNotes: managing lightweight interactions in the desktop. ACM Transactions on Computer-Human Interaction 4, 2 (June 1997), pp.137-168.
[2] http://www.tacc.utexas.edu/tacc-projects/displaycluster
[3] http://vis.ucsd.edu/~cglx/

メール配信タイミング制御技術
オフィスワークへの集中を邪魔しないタイミングでメールの着信を通知します.

擬音語・擬態語を用いた状況提示技術
過去から現在までの出来事を、漏らさず短時間で把握できるようになります.

超低演算量映像符号化技術
一般の符号化方式と比較して,1/2 ~ 1/10 の演算量で圧縮符号化ができる技術です.

超臨場感テレワークシステムの心理学的評価
超臨場感テレワークシステムを、感性心理学的に評価できるようにします.

実用空間共有技術
隣にいるような感覚で,共通の作業オブジェクトを見ながら協調作業できるようになります.

ハイパーインフォメーションターミナル
オフィスの様々な情報を容易に表示して共有することができるようになります.

擬音語・擬態語変換技術
オフィス内の音や人の動きを,瞬時に理解できるようになります.

割り込み拒否度推定技術
互いの仕事を邪魔することなく,必要なコミュニケーションを取ることができるうになります.

任意エリア収音技術
広いオフィスの中で,あるエリアの音だけを収音できるようになります.