テレワークの現状

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テレワークの現状と課題

テレワークの現状

テレワークの分類は,雇用面及び働く場所という観点から分類すると表1のようになります.

表1 テレワークの分類*1,2
 

雇用形 

非雇用形

在宅型

I.在宅勤務型

IV.在宅ワーク型

モバイル型

II.モバイルワーク型

V.SOHO型 

施設利用型 

III.サテライトオフィス型

1.佐藤彰男,“テレワーク「未来型労働」の現実”,岩波書店,2008
2.テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議,“テレワーク人口倍増アクションプラン”,2007

現状は,「I.在宅勤務型」のテレワークが主流です.国土交通省の「平成22年度 テレワーク人口実態調査」によると,テレワーカ率は16.5%(2010年)とのことでした.ここでのテレワーカの定義は,「ふだん収入を伴う仕事を行っている人の中で,仕事でITを利用している人かつ,自分の所属する部署のある場所以外で,ITを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間あたり8時間以上である人(広義の定義)」となっています.この定義からも分かる通り,今までのテレワークは週1回程度行う人が多数含まれており,常時メインのオフィスから離れて働いている、いわゆるフルテレワーカーは非常に少ないと考えられます.

こういった週1回程度の在宅勤務が典型的なテレワークを支援するツールとしては,Web会議システム,セキュリティアクセス用USBキー,シンクライアントなどが挙げられます.これらは,安全に自宅から会社の情報にアクセスできて,必要な時に遠隔でも会議ができるものです.これらのツールを活用して週1回程度自宅で仕事をするのが典型的なテレワークの姿でありました.

東日本大震災とテレワーク

震災時のオフィスの様子東日本震災時のオフィスの様子(状況を知らせるポップが表示されています)大地震の翌週からは首都圏において,計画停電が始まり,電車に運休が相次ぎ,人によっては通勤が困難になりました.また,今夏の電力需要のピーク時における電力供給の確保のために,節電対策として輪番での夏季休暇,週休の平日化,サマータイムの導入などが実施されました.

政府の電力需給対策については,2011年5月13日に経済産業省から対策が発表されました.「夏期の節電啓発について」という発表資料には節電対策に関連して,テレワーク(在宅勤務等)が挙げられています.

総務省においては,テレワークの推進を行う目的で設置されたWebページにおいて,「テレワーク(在宅勤務)による電力消費量・コスト削減効果の試算について」を発表し,日本テレワーク協会・日本テレワーク学会と連携し,BCP対応・節電に対応するためのテレワーク導入のガイドラインを策定しています.

以上のように,震災後にテレワークを取り巻く環境は大きく変化しました.すなわち,停電対応や拠点の分散化のためにテレワークを活用しようという機運が高まっています.しかしながら今までのテレワークは,週に1回程度ひとりで集中できる仕事を持ち帰り在宅で行うというのが現状であって,極めて限定的な利用にとどまっていました.

今後は,今まではテレワーク人口の中でも非常に少ない割合であった常にセンターオフィスと異なる場所で勤務するようなサテライトオフィス型のテレワークや,週に3回以上の在宅勤務を行うフルタイムテレワーク(常時型テレワーク)などのテレワークも考える必要があるでしょう.

テレワークの課題

フルタイムテレワークを可能とするためには,今までのような一人でできる仕事だけをテレワークでもできるようにするだけではなく,チームで行っている仕事もテレワークでもできる必要があるでしょう.チームでの仕事をスムーズに進めるためには,会議の時だけではなく,普段からのコミュニケーションをきちんとサポートしていく必要があります.

実際,総務省の通信利用動向調査(平成22年報告書)によると,テレワークを導入していない,具体的な導入予定もない企業に対して,テレワークを導入しない理由を聞いたところ,主に以下の理由が挙げられました.

  • テレワークに適した仕事がないから(69.8%)
  • 情報漏洩が心配だから(25.5%)
  • 業務の進行が難しいから(20.5%)
  • 導入するメリットがよくわからないから(20.5%)
  • 社内のコミュニケーションに支障があるから(16.1%)

などとなっています.

業務内容や進め方とテレワークの関係に関する課題が多い中,社内コミュニケーションへの不安も大きいということが分かりました.

以上のように,これからのテレワークには離れたオフィスをつなぎ,1ヵ所で仕事をしているようなコミュニケーションができる,そういった職場環境を作るシステムが必要となるでしょう.