超臨場感テレワークを実現する技術:擬音語・擬態語変換技術

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擬音語・擬態語変換技術

 私達は,オフィスで円滑に業務を進めるために,日々様々な情報を利用しています.例えば,会議資料などの業務に直結する情報のほかに,同僚達の立ち振る舞いや声の抑揚などのオフィス状況に関する情報が挙げられます.このオフィス状況を知ることで,チームへの帰属意識を感じたり,状況に即した行動をとるための手掛かりとしています.
 しかし,現行のテレワークシステムでは,遠隔地のオフィス状況の伝達について考慮されていません.そのため,オフィスから離れて仕事をする社員が,オフィスの状況が分からず疎外感を感じたり[1][2],オフィスにいる社員の状況がわからずコミュニケーションを遠慮する等の問題が発生しています.
 オフィス状況を伝達し,遠隔地から確認するためには,例えば,オフィス内に設置したカメラやマイクにより撮影・収音した映像や音声を視聴する方法があります.しかし,時間軸のある映像・音声を視聴し,状況を理解するには時間がかかることが問題となります.また,マイクにより会話を収音すると,会話内容を知られることに抵抗感を持つ社員もいますし,秘密情報の漏えいにつながる危険性もあります.
 擬音語・擬態語変換技術は,オフィス内の様々な場所で生じた音や人の動きを擬音語や擬態語に変換する技術です.擬音語・擬態語を用いることで,漫画の効果表現のようにオフィスの状況を直感的に判りやすく表現することができ,遠隔地からでも「フロアのこの辺りに人が集まっている」,「○○と××さんが熱心に話している」等のオフィス状況を瞬時に理解できます.これにより,相手の状況に応じた円滑なコミュニケーションを行ったり,同じ場所にいるような一体感を得られるようにします.

擬音語変換

 オフィス内の音を分析し,人の話し声や物音を表現する6種の擬音語から,音量と種別に応じた語を選択します.音量については,音の振幅エネルギの大きさによって評価します.音の種別については,振幅エネルギの時間変動と周波数スペクトルの形状を用いて,無音・声・雑音(声以外のものの音)のどれかを判別します[3].無音には「シーン」を,雑音には「ザワザワ」を,声には音の小さい順に「ヒソヒソ」「ボソボソ」「ペラペラ」「ガヤガヤ」を選択します.

擬態語変換

 オフィス映像を解析し,動作を表す4種の擬態語から,人物の動きに即した語を選択します.動きのあった画素の集合を人物領域として検出し,人物領域を追跡することで,その方向・速さ・移動範囲を推定します.人物領域の移動方向が一定の場合(例.歩く場合,走る場合など)には速さに応じて「テクテク」「スタスタ」を,ランダムの場合(例.席で作業する,立ち話をする場合)には移動範囲に応じて「テキパキ」「ゴソゴソ」を選びます.

擬音語・擬態語変換の例
図1. 擬音語・擬態語変換の例

図1は,擬音語・擬態語変換の一例です.オフィスの奥から手前に人が歩いてくる様子や,同僚が座って会話をしている状況が一目でわかります.
擬音語・擬態語変換技術を利用したオフィス状況伝達システムについてご興味のある方は,文献[3]をご参照ください.

[1] 日本テレワーク協会,“Nテレワークの推進のための調査研究 報告書”,総務省請負事業, Mar. 2007.
[2] 総務省, “平成20年度 テレワーク普及促進のための調査研究”, Mar. 2009.
[3] 比嘉恭太,石川真澄,野村俊之,仙田裕三,“複数の映像提示方法を備えたオフィス状況伝達システム”,情報処理学会研究報告,Aug.2011

メール配信タイミング制御技術
オフィスワークへの集中を邪魔しないタイミングでメールの着信を通知します.

擬音語・擬態語を用いた状況提示技術
過去から現在までの出来事を、漏らさず短時間で把握できるようになります.

超低演算量映像符号化技術
一般の符号化方式と比較して,1/2 ~ 1/10 の演算量で圧縮符号化ができる技術です.

超臨場感テレワークシステムの心理学的評価
超臨場感テレワークシステムを、感性心理学的に評価できるようにします.

実用空間共有技術
隣にいるような感覚で,共通の作業オブジェクトを見ながら協調作業できるようになります.

ハイパーインフォメーションターミナル
オフィスの様々な情報を容易に表示して共有することができるようになります.

擬音語・擬態語変換技術
オフィス内の音や人の動きを,瞬時に理解できるようになります.

割り込み拒否度推定技術
互いの仕事を邪魔することなく,必要なコミュニケーションを取ることができるうになります.

任意エリア収音技術
広いオフィスの中で,あるエリアの音だけを収音できるようになります.